ストーリー
低所得者住宅の一角。薄汚れた街角で幼い子どもたちが、路上に転がる使い古しの注射器で遊んでいる。麻薬中毒者独特のうつろな目つきでぼんやりと佇む、ティーンエイジャーたちの姿・・・。「ヘロインをいくらで手に入れるの?」 サンデー・インディペンデント紙の記者ヴェロニカ・ゲリンは、声をかけた。麻薬犯罪の実態を取材するために、危険極まりない地域へ足を踏み入れたのだ。「警察じゃないの。ただ記事を書くだけなのよ」 だが、彼らはそんな彼女を、ただ無表情に見つめるだけだった・・・。
郊外の家には、家族や友人たちが集まっていた。ヴェロニカのひとり息子カハル(サイモン・オドリスコール)らと庭でサッカーに興じる子どもたち、はじける嬌声、大人たちの笑い声。ここには、愛する家族との幸せな暮らしがある。だが、一方で麻薬売買によって巨万の富を得る犯罪者の利益の為に、多くの子どもたちが尊い命を落としている。「この事実を報道しなくては・・・」 ヴェロニカは、夫グレアム(バリー・バーンズ)に打ち明ける。
早速、ヴェロニカは取材を開始する。ダブリンの裏組織に詳しいトレーナー(シアラン・ハインズ)や友人でダブリン警察の刑事から情報を聞き出し、関係があると思われる人々をつぶさに調べ訪ね歩いた。危険人物に対してもひるまず取材し、ありのままを記事にし続けた。そんな彼女の半ば強引な取材方法に、同僚や他紙の犯罪記者たちは眉をひそめ、ジャーナリスト連中の集まるパブでのジョークのネタにしていた。
彼女の執拗な取材は、麻薬売買組織の首謀者ジョン・ギリガン(ジェラルド・マクソーレイ)へと迫ることになる。トレーナーのボスでもあるギリガンは、注目を浴びることを好まず、トレーナーに対してヴェロニカとの接触を控えるように警告する。そして、ヴェロニカに対しても警告が発せられた。それは、彼女の自宅の窓ガラスに残された銃弾の跡。愛する家族と穏やかな時間を過ごす場である自宅への警告は、ヴェロニカに恐怖を与えると同時に、彼女の追求が核心に迫っていることを意味していた。
だが、銃弾はヴェロニカの信念を変えることはできなかった。メディアとアイルランドの世論を見方につけ、再び取材を開始する。夫と息子のカハルを、心の支えとして・・・。伝えなければならなかった。この国のどこかで、今日も誰かの息子が、夫が、友人が、麻薬によって死んで行く事実を。いよいよ組織の実態を突き止め報道する準備が整った時、ギリガンの屋敷のドアを叩いた・・・。 |